講 評
子供が表現の欲求を満足させ、夢中になって絵をかくことについて、小学校の学習指導要領から捉えると次のような造形活動が見られると解説されています。
児童は、幼いころから、身近な紙や地面に思いのままにかいて楽しんでいる。やがて線や形になり自分なりの意味を見つけるようになる。この活動は、自分の思いや願いを表すことにつながっていく。それは、自分の感じたことや思ったことを自分の方法で表すという表現の始まりともいえる。児童は、表したい思いを基に発想を広げたり、どのように表すかを考え、工夫して表したりする。それらは次第にまとまりを見せるようになり、作品として残したいという意識も生まれる。
子供たちは、表したいことが見つかれば、すぐに絵に表せるかというと、そうではありません。表したいことをどのように表すか考える段階があります。紙を縦や横にしながら、表したいことをどのように表そうか、いっぱい悩みます。子供たちにとって、表したいことを見つけることは、自分のしたいことを見つけることでもあります。これからも、子供が考える時間を大切にしてほしいと思っています。
さて、今回の審査では、見たり感じたりする力、次にどのような形や色にするかを考える力、それを実現させるために用具や表し方を工夫する力、一度かいたものを改めて見て新たなものをつくり出そうとする力など、子供たちの作品からたくさん「力」を感じることができました。
一方で、歯を磨く様子や学校の歯科検診を同じような方法でかいているなど、表したい内容、形や色もよく似ている作品が並んでいる学校もありました。歯医者さんでの自分だけの体験など感じたことや思ったことを自分の方法で表し、子供の造形的な資質・能力が自然に発揮されるように工夫していってほしいです。
最後になりましたが、このような場を毎年、提供しつづけて頂いている主催者の皆様方に感謝するとともに、今後も多くの子どもたちがこうした作品を作り続け、応募していただくことを願っています。
兵庫県小学校教育研究会図工部会
岡田 修平