マネキン実習から相互実習へ 〜相互実習で学ぶことと学ぶべきこと〜
歯科衛生士の3大業務である歯科診療補助・歯科予防処置・歯科保健指導を修得するため、学生たちは3年間で多くの講義・実習を受講します。その多くは知識のみならず技術習得を要するため①講義で原理や理論を学び②マネキンで実習し③学生間での相互実習で理解を深めるという構成となっています。歯科診療補助ではバキュームや印象採得、歯科予防処置では各種スケーラーおよびエキスプローラー・歯周プローブの操作やフッ化物の応用、歯科保健指導では学んだ知識を活用し主に実践できるようになるものです。中でも実習中での患者役が、マネキンから学生自身となるステップは緊張と不安が交錯するものであると同時にやりがいや楽しさを感じることのできる瞬間でもあります。
講義後に行われるマネキン実習は、材料・器具・器材の特徴、操作方法などを教本を用い確認し、講義通りに実際に取り扱い、マネキンを患者として施術を行います。そしてバキュームやスケーリングなどでは実技試験も行い、相互実習可能なレベルに到達しているかを確認します。学生たちは、自主練習や教員チェックを受けながら合格を目指します。そしていよいよ相互実習です。相互実習は、規定の時間内で指定された部位の操作がスムーズに行えるよう各自事前学習を行い臨みます。ここで学ぶことは、経験です。初めは、感染対策も考えながらの実習のため、動きはぎこちなく、口腔に触れる恐怖と緊張で予定通りの術式を実施することができないこともあります。しかし回数を重ね、毎回実習後の教員とのまとめや実習帳作成で施術を振り返ることで、より臨床に近い状況を経験でき、恐怖や緊張はほんの少しずつですが自信へと変わっていきます。そして、患者役で経験した不快や不安を考察し、術者や補助者の時にどのように活かすべきかを考え学びを深めます。この相互実習で患者役を経験することで、歯科衛生士として高いコミュニケーション力や周囲への配慮(思いやり)などの必要性・重要性を学びます。
さて、5類感染症となったCOVID-19感染症もまだまだ予断を許せるものではありません。学内実習ではコロナ禍で培った感染予防を継続し、学生たちの安全を確保しながら、新たな技術習得ができるようにしていきたいと思っています。
このようなステップを経て学生たちは学び、訓練を重ね、3年目には先輩として最も身近で素敵な歯科衛生士像を新入生たちへ見せてくれます。私たち教員もその成長する姿を嬉しく思うと同時に更なる成長をサポートできるよう努力して参りたいと思います。
(教務副主任 肥塚 美奈子)