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要介護高齢者に対する口腔ケア実習 ~超高齢社会に対応できる歯科衛生士を目指して~

シミュレーター「マナボットⓇ」

シミュレーター「マナボットⓇ」

 高齢者率が年々高くなる現在、歯科衛生士に求められる知識や技術は変化しつつあります。そのような変化に対応できる歯科衛生士教育として、2年次後期の歯科保健指導では、要介護高齢者に対する口腔ケア実習を行っています。
 この実習では、高齢者の口腔内を再現した顎模型および周辺器官を再現したシミュレーター「マナボットⓇ」を使用し、要介護高齢者に対し、的確な口腔健康管理を行うために、高齢者の口腔の特徴を理解し、実践的なケアの技術を身につけることを目的としています。
 まず、実習を行うにあたり、患者設定を2年前に脳梗塞を発症し回復期病棟に入院中、左側に麻痺あり、JCS:Ⅱ-10、側臥位でのケア実践としました。設定を確認した学生は、座学で学習した知識の整理を行い、実習に臨みます。ケアに必要な器材を準備し、①体位調整②口腔内観察③義歯清掃④口腔内清掃⑤粘膜清掃⑥口腔内洗浄⑦義歯装着を行い、教員チェックを受けます。体位調整では、誤嚥させない安全なケアを行うために、麻痺側を上にし、頸部が伸展しないように班員で確認しケアを始めます。普段の実習では、見る機会がない高齢者の口腔内観察を行う学生たちは、清掃状態、動揺歯、根分岐部病変、咬耗、残根歯、さまざまな補綴物などをアセスメントシートに記録し、高齢者の口腔内の特徴を再認識しているようでした。次に、義歯清掃、口腔内清掃、粘膜清掃、口腔内洗浄を行いますが、口腔内の状態に適した清掃用具を選択して正しく使用する技術と適宜吸引が必要になります。今回は、ベッドサイドでの口腔ケアなので、ポータブル吸引器を使用します。誤嚥させない的確な吸引操作が必要となりますが、初めて使用する吸引器の操作に苦戦していました。安全に時間内にケアができるよう班員で考え、工夫する姿は歯科衛生士を目指す学生として頼もしく思いました。そして、ケアが終了した班から教員チェックを行います。教員チェックでは、口腔内の清掃状態、ケア実技の安全性としてマナボットⓇの咽頭部を外し、咽頭部・気管への水分や汚れの落ち込みをチェックし、評価します。その際、できていなかったことに関しては学生自身になぜできなかったのか、どうすればよかったのかを考察するよう促します。同時に解剖学的形態、摂食嚥下のメカニズムについての確認を行います。その後、学生は自己評価と班員同士で他者評価を行い、3年次の臨床実習本実習にも繋げられるように今後の課題を考えます。口腔ケア実習は、3年次後期にも行います。2年次では教員の指導のもと実習を行う学生ですが、臨床実習で学んだことを実践できる3年次では積極的に取り組み、誤嚥リスクを下げることができているため、本実習の有効性を感じています。
 今後も、時代の変化に対応し、現場で求められる知識や技術を習得できるよう、ひとつひとつの実習を充実させていきたいと思います。
(専任教員 難波 恵子)