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2012.02.16

医科歯科連携、近隣の先生と確実な一歩から

<糖尿病患者医科歯科連携研修会>

1月22日(日)午後1時から兵歯会館5階ホールで糖尿病患者医科歯科連携研修会が行われた。橋本常務理事の司会で始まり、豊川会長があいさつで「日本 は超高齢社会を迎えて、患者が急性期から回復期、在宅へと移っていく過程で医科歯科連携は極めて重要である。また、このことが県民の生涯に亘る歯科保健医 療提供体制の拡充に役立つものとも考えている。厚労省の国民健康作り運動プランのなかでも全身の健康作りに歯科が重要な役割を果たしていることが認知され ている。医科歯科連携のもとに生きがいを支える歯界医療をより拡充進化させていきたいと考えている。どうか一日有意義な研修になるように祈念している」と あいさつした。

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あいさつする豊川会長

最初に「糖尿病治療薬の進歩と歯周病の予防をめざして」という題で、柏木厚典滋賀医科大学医学部附属病院長が講演を行い、「世界の糖尿病患者は急激に増 加しており、日本では将来人口の15%位まで増えると予想されている。2010年に日本で新しい糖尿病の診断基準、HbA1c が取り入れられ6.1%以上を糖尿病と診断していたが、欧米での検査方法と異なっており、測定値が0.4%低い数値で診断してきた。国際的な情報交換に問 題が出てきているので、この4月から診断基準を変えることになり、6.5%を診断基準とすることとなった。数値が上がっても悪化したと誤解しないように啓 発する予定である。糖尿病治療の三本柱は血糖値のコントロール、血圧のコントロール、血清脂肪のコントロールであり、そのための経口薬は大きく6種類、 1、インスリン分泌促進薬 (1)スルホニル尿素薬 (2)ナテグリニド (3)DPP-4阻害薬 2、インスリン感受性増強薬 (4)ピオグリタゾン  (5)ヒグアナイド 3、糖吸収阻害薬 (6)アカルボース であり、さらにインスリン製剤も多く開発されており、治療薬としては非常に良くなっている。 それでも厳格な血糖管理に関して 1.血糖管理が不十分 2.膵β細胞の疲弊 3.低血糖の問題 4.体重の増加 5.心血管イベントの抑制ということが 非常に問題となっている。これらを解決する夢のような薬がインクレチンである。他の薬との併用でも効果が十分期待できるので糖尿病の治療は新しい時代に 入ったといえる。脂質異常、高血糖、血圧をコントロールすることである程度糖尿病と合併症の予防ができる時代になった。以前は糖尿病と歯周病との関係は全 く考えてなかった。歯周病が悪化すると炎症性物質(サイトカイン)が出て、歯周病が重症であるほどその濃度が高い。この炎症性の物質はインスリンの抵抗性 を増強するため糖尿病が悪化する。一方糖尿病があると慢性の炎症が持続し、歯周病が進行する。歯周病を治療すると HbA1c が改善するという報告がある。また、なかなか治らない歯周病の原因の1つに糖尿病があるということも考える必要がある。ある研究では歯周病の治療を行った 結果、HbA1c が0.55%下がったという報告がある。これはかなり大きな数値であり、患者と歯科医師と内科医、糖尿病医、循環器医との医療情報の交換は重要である。最 近、糖尿病手帳にかかりつけ歯科医を記入する欄ができたが、歯科所見を記入する欄がない。連携は簡単にできることではないが、地道な努力が必要であると思 われる」と締めくくった。

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講演する柏木厚典病院長

10分間の休憩ののち、「歯周医学(Periodontal Medicine)の現状と課題-歯周病と糖尿病との関係を中心に-」との題で大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座の村上伸也教授が講演を行 い、「歯科の医療の特徴は、QOL を支える医療であって、物を食べるということは単に栄養の摂取を超えて、味わう、楽しむという人間らしい質を支える医療を担当している。統計によると中高 年層は歯周病で年々歯の喪失が増加している状況にある。歯周病はバイオフィルムによる感染症であると考えられている。歯周組織の健康は免疫で守られてお り、免疫の仕組みが破たんすると歯周組織の健康は維持されない。さらに歯があるということは感染のリスクを背負っているといことであって、今後寝たきりな どの介護が必要なかたが増えてくると、口腔内に歯を残しておくという意義に関して、別の観点から宿題をもらうと感じている。歯肉炎から歯周炎に進むときに は、患者が持っている生活習慣や体質、遺伝的な素因というものが非常に大きな影響をおよぼしている。歯周病がひどくなるとサイトカインの量は増え、治療し て歯肉の炎症が治まるとサイトカインの量は減る。全身との関わりでは HIV の患者では急激に歯周病が進行する。逆に歯周病がさまざまな全身疾患に影響することを調べることを歯周医学(Periodontal Medicine)と言い、臨床的な研究が全世界的に行われている。歯科の病気が全身のある病態に悪い影響を与える可能性は言われていたが、当時科学的根 拠(エビデンス)を得るところまで踏み込めなかった。最近、科学的根拠が得られつつあることで注目されている。エビデンスに関する医療情報に関しては、イ ンターネットで『MINDS』と検索すると、厚労省管轄の無料で誰でも自由に閲覧することができるサイトがある。この中で『糖尿病患者に対する歯周治療ガ イドライン』で比較的レベルの高いエビデンスがQ&A形式で掲載されている。ただし、エビデンスは時間の経過とともに変わる可能性があるので、可能な限り 最新のエビデンスにアクセスすることが大変大切である。2008年に歯周病が糖尿病の6番目の合併症に入り、医科の先生の目に触れる機会が多くなって、糖 尿病協会と日本歯科医師会との連携で歯科医師登録医制度も推進された。糖尿病から歯周病への影響は免疫の不全が起こる、傷が治りにくい、感染し易いなど、 また歯周病から糖尿病への影響では、歯肉の慢性的な炎症が糖尿病に影響を与えることがあると理解されている。たとえば、動脈硬化症や心臓血管系へのリス ク、早期低体重児出産、誤嚥性肺炎など。医科と歯科の連携に関して、組織として動くことは大事だが、近隣の良く顔が見えている先生がたとまず確実な一歩を 始めるということが、実質的な運用から考えて大事だと思う」と述べた。

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講演する村上伸也教授

その後、質疑応答が行われ、最後に村上副会長の閉会の言葉で研修会は終了した。



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